2023.07.06
きよし農園さん
投稿スタッフ
こんにちは。
今年の金沢は梅雨入りしてからも晴れた日が多く、すでに夏のような気配が漂っております。おみちょでも鮮やかな夏野菜が並び始め、あれやこれやと購入しては、蒸し暑さで疲れた身体に取り込んでいる日々です。
さて、夏野菜というと皆さま何を思い浮かべますか?
きゅうり、トマト、枝豆、ゴーヤ、どれも大好きなお野菜なのですが、今日は「ナス」についてお話しさせてください。
現在、ナスは世界中で1,000種類ほどあるとされ、日本国内だけでも200種類近くの品種があるといわれています。
そんな数あるナスの中で、たった2軒の農家さんで大切に受け継がれているナスが存在することはご存知ですか?
私たちの暮らす金沢市の伝統的野菜「加賀野菜」15種のひとつ『ヘタ紫なす』です。
郷土料理の「オランダ煮」や「なすびそうめん」などでも親しまれている、金沢市民の大好物です。
名前の通りヘタまで紫色のナス(ヘタの下の部分がより鮮やかな紫色なのです!)で、小さくころころした見た目がかわいらしく、光沢のある卵形をしています。
先週、そのヘタ紫なすを生産されている農家さんへ取材をさせていただきました。
「きよし農園」代表の多田礼奈さんです。
昨年の冬頃にテレビできよし農園さんが特集をされており、礼奈さんのご活躍を知り、夏になる前にヘタ紫なすの取材をさせていただきたいと、密かにずっと想い続けておりました。
おみちょの掘他さんとのお取引きがあるのを知り、堀他の浅一さんに相談を差し上げたところ、早速その場で連絡を取ってくださり、あれよあれよと次の週にお邪魔できる運びとなりました。そんな距離感もありがたいなと思います。
では早速私たちがお伺いしたヘタ紫なすのお話を。
冒頭でも言いましたが、加賀野菜の一種に選ばれているヘタ紫なすですが、現在生産者さんは2軒のみ。私たち、実はその現実をこの日初めて知りました。
きよし農園さんともう一軒大桑の生産者さんの2軒。
夏の期間、割と常に市場に並んでいる野菜だったので、もっと多くの生産者さんがいるものだと思っていました。
その背景には、ヘタ紫なすが病気にも虫にも弱く、さらに暑さにも寒さにも弱いという特徴があります。
また、節間が短いのに葉が多いとのことで、常に葉っぱを間引かないと実が傷がついてしまうという手間も加わるとのことです。
昔はもっと多くの農家さんが生産されていましたが、手間がかけられなくなり皆さん徐々に育てやすい千両なすに移行されて行かれたそうです。
繁忙期には毎日多くの収穫や仕分けなどの作業がある中で、収穫と同時に葉の間引きしないといけないとなると、それは確かにカナリのお手間だなと思いました。
また、暑さによってストレスを感じるとえぐみが出てしまうため、収穫も朝早く行うことが重要とのことです。毎朝5時頃から礼奈さん、お祖母様、お父様、そしてスタッフ2名に加え、臨時のスタッフも2名雇って行っているとのことです。日によっては3時頃からスタートしても、深夜まで作業が終わらないなんて日もあったり。
それもそのはず、1株のヘタ紫なすから、年間で収穫できる数は約130個もあるらしいのです!
また、梅雨の雨が続くと味が薄くなったり、暑い日が続いたり水が足りないとえぐみが出てきたりと、常に自然相手に工夫をされていることもお話しくださいました。
「ヘタ紫なすの特徴は、味が濃くて甘いこと。身の締まりが良いので、炊いた時もボソボソしないでむちっとしています。細胞が整うとより舌触りが優しくなるので、日々なすにとって良い土作りを行い、定期的に全てのカバーを剥がして土を追加したり、畝に水を流したりしています。」と礼奈さん。
畑で話を伺いながら、小さななすの実を触ったスタッフが「ぱつぱつですねー」と言った瞬間、礼奈さんの目がキラリと輝きました。
「そうなんです!ぱつぱつで硬いものが採れた時に『わー!きたー!!』って思うんです!」と語るその表情がなんとも爽やかで印象的でした。
さて、「きよし農園」さん。金沢市内でも、湯涌温泉郷へと続く山間部の浅川地区に位置します。
お名前の由来は、礼奈さんの亡きお祖父様のお名前から。
兼業農家でお勤めもされながら、「金沢ゆず」と「ヘタ紫なす」を育て続け、「この地をゆずの名産地にしたい」「伝統野菜ヘタ紫なすを守りたい」というお祖父様の想いと共に、礼奈さんは23歳の時にこの農園を引き継がれました。
当時は別のお仕事をされていて、小さい頃から農業のお手伝いはしてきたとのことですが、実際自分で引き継ぐとなると、それは全く別物だったとのこと。
お祖父様の勧めで、2年間金沢農業大学校に入学して研修を積み、卒業後には認定農業者の資格を取得されました。しかし、在学中の、農園を引き継いで1年後には、お祖父様は他界され、お祖父様のノウハウをしっかりと全て受け継ぐことは叶わなかったとのことです。
「実際やってみてこんなにやることあるんやなぁと思いました」と礼奈さん。
まず、最初の1−2年は「段取りをつかむこと」に専念されたとのこと。
先程もちょっと触れましたが、きよし農園さんではヘタ紫なす以外にも金沢ゆず、しろねぎも作られております。お祖父様の時は田んぼや他のお野菜もされていたそうですが、礼奈さんが引き継いでからはこちらの3種に主に絞って作られております。
年間のスケジュールで、どの時期にどの作物の何を仕込むことが必要か、その「段取り」が必要になります。農業では土作りもとても大切で、土作りは前年度から始めないといけないため、年間スケジュールといっても1年スパンではなく、より長期の段取りが重要になります。
「土作りを前年からしないといけないことも知りませんでした。今も調べれば調べる程、何が良いのかわからなくなる。でも、それを考えるのが楽しいです。」と礼奈さん。
今年で8年目。
「やっぱり美味しいものを作るということが一番の目標です。私たち生産者がもっともっと努力をして美味しいものをお届けしたいと思っています。美味しさのパワーってすごいんです。」とキラキラと語っておられたのが本当に素敵でした。
「美味しいものを食べるとそれだけで1日の疲れが癒されます。忙しいとつい美味しさより安さや便利さを選ぶことも多くなりますし、実際に私もそういう時も多々あります。でも、是非一回でも美味しい野菜を食べてほしいと思います。農園を継いでから、沢山の生産者さんと繋がる機会も増えて、いろんな農家さんのお野菜をいただくと、もう戻れないと思っています。」
イチバのハコのスタッフも、よくおみちょの八百屋さんに「今日のこれは美味しいぞー。この生産者さんのは間違いないよー。」などとオススメされて、色んな美味しいを知りました。でも、私たちもおみちょで買い物しない日もありますし、スーパーでお野菜を買うことも多いです。
語弊がないようにちょっと付け加えると、こだわりのお野菜を育ててくださる生産者さんもいて、でも一方で需要と供給を守るために量産をして育ててくださる生産者さんもいます。どちらも同じ農家さんであり、どちらもとても大切な存在だと思っています。
私の母方の祖父母も群馬で農家をしており、兼業農家だったので、量産はできていませんでしたが、どちらかというと後者の部類だったのかなと思っています。すごく特徴的な何かを育てていたわけではありませんが、でも毎日毎日日が昇る前からどんな雨の日も暑い日でも畑に行って大切に大切に作物を育てていたことを記憶しています。夏休みに、おばあちゃんと一緒に畑に行って、採れたてのきゅうりをかじったり、トウモロコシをもいで帰って、すぐに蒸して食べた時の美味しいさは、未だに一番だと思います。
少し話が逸れてしまいましたが、今は流通が整備されて、こだわりのお野菜を新鮮なうちに地産地消できたり、遠く他県のお野菜や季節を問わずに色々なお野菜が買えたりと、選択肢が増えていることはとても良いことだと思います。色んな流通者さんのおかげで、美味しいお野菜を買えることも多くなっているので、それもとてもありがたいと思っています。
でも、やっぱり今回のように、育てにくいと言われている伝統野菜を、お祖父様の想いを継いで、大切に大切に育てている礼奈さんのような方にお会いすると、声を大にして「是非こちらのお野菜を食べてほしい!!」とお伝えしたいです!
ちなみに礼奈さん、2月に息子さんを出産されて4ヶ月のお母さんなのに、産後1ヶ月後から畑に立って、今では配達もこなされているとのこと!それも新鮮なうちに食べていただきたいこだわりだと思っています。地元のお料理屋さんは、農園まで買いに来てくださったりしているようですが、小売の店舗やスーパーには自ら配達もされています。
礼奈さんにお会いした後に、おみちょの堀他の浅一さんにその話をしたら、「この間なんて、赤ちゃんを抱っこ紐に抱えたまま、ヘタ紫なすを持ってきてくれたんだよー。もう、そんな時は電話で呼んでーって思ったよ」なんて苦笑されていました。笑
金沢市内では、堀他さんの他に、サカイダフルーツ、むつぼしマーケット、カジマート、ほがらか村、Aコープなどで購入できますよ。
最後に、礼奈さんにおすすめのヘタ紫なすの食べ方をお伺いしました。
やっぱり炊いても煮崩れしないことからオランダ煮やなすびそうめんもおすすめとのことですが、新鮮なものはラップに丸ごと包んで2-3分チンするだけで絶品とのことです。お塩やポン酢などでお召し上がりください。また額の部分もコリコリしているし、ヘタに一番近い部分もそこが一番栄養があるので切り落とさないで召し上がってみてほしいとのことでした。
取材の日、その日の朝に収穫したヘタ紫なすをいただいて帰ってきたので、早速レンジでチンする方法を試してみたところ、もう身がむっちむちで味が濃くて、塩もポン酢も逆にいらないくらい、なすの甘みを存分に味わえ、サイコウでした!!
これは確かに他のものに戻れない。。。と思いました。
今回こちらのスタッフ日記を書くにあたり、ヘタ紫なすを色々調べていたら、お漬物にも向いているとのことで、今年の夏は色々な方法でいただいてみたいと思っています。
ちなみに翌日には、もう一回レンチンと揚げ浸しにしていただきましたが、もう揚げ浸しも間違いなしの美味しさでしたよ。
また、市内で召し上がっていただけるお料理屋さんなどもきよし農園さんのHPに載っておりますので、是非ご覧ください!(とっても素敵なHPです。PCで見た際のドローンの映像もすごく良いです!)
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