最新のよみもの
安宅/松下さん
「おみちょびと」の編集担当の白江です。今回も引き続き金沢中央卸売市場リポートの後半をお送りします。 近江町市場・ヤマカ水産の番匠さんと別れ、市場内の食堂で朝食を済ませた後、いよいよ8時半から始まる二番セリの見学です。 大きなトラックで次々に魚が運ばれ、水揚げされた漁港ごとに場内に並べられていきます。
セリが始まる前に、ヤマカ水産の取引先である仲買、安宅(あたか)さん勤務の松下まさよさんに場内を案内をしていただきました。圧倒的に男性の多い世界では珍しい女性仲買人の松下さん。男性社会に揉まれ、たくましく仲買のお仕事を続けてこられました。赤いジャンパーに仲買人の帽子が似合ってかっこいい!スナップ写真をお願いすると「いややわー、恥ずかしいー」とシャイな一面も。 そんな松下さんにセリを待つ生簀(いけす)の魚たちを説明していただきました。 見学当日は時化(しけ)のため魚が少なかったのですが、とらふぐ、ホウボウ、カワハギ、鯛など、いろんな種類の魚を見ることができました。近海で獲れた「きときと」(金沢弁で、新鮮な)な魚です。「ホウボウの名前の由来は、ほーほーって鳴くからとか、方々(ほうぼう)で獲れるからって言う人もおるね」と松下さん。 生簀からつまんだカワハギを耳に近づけて「魚、鳴くから聞いてみ」生まれて初めて聞いた魚の声にびっくり! 「魚が嫌いって言っとる子も、こうやって魚の声聞かせてあげたり、魚のこと色々教えてあげるとみんな魚食べたいって言うげん」さすが子育てを経験したママさん。そしてここにも魚を愛する人が。
そうこうしているうちに品定めを始める仲買の人がわらわらと集まりだしました。邪魔にならないようにしなければ、と思っていると、突然場内にけたたましいベルの音!いよいよ二番セリの始まりです! セリが始まると先ほどまでのんびりとしていた空気が一瞬で変わり、さっきまで案内してくださっていた我らが松下さんもいつの間にか仲買の群の人に。場内にはセリ人の独特の声が響き、魚が次々とセリに掛けられていきます。
全てのセリが終わるまで30分ほど。意外にもそれは粛々と行われていきました。行き先の決まった魚は、無駄のない流れ作業であっという間に運ばれていきます。 午前9時過ぎ。早朝にもかかわらずあれだけたくさんの人で賑わっていた市場も、私たちが市場をあとにする頃には、閑散としていました。「市場の朝は早い」そんなナレーションで始まる小学校の時に見た社会科の教育番組を思い出しました。 今回取材した金沢中央卸売市場には近江町市場と同様、魚を愛するプロたちがいました。そしてちょっぴりシャイだけどとても気持ちの良い優しい人達です。イチバのハコが「おみちょびと」だけでなく、この人達に陰ながら支えられているのだと思うと胸が熱くなりました。 今度皆さんのお手元にイチバのハコが届いた時、このことを思い出してくださると嬉しいです。